肺炎
肺炎とは
肺炎とは、主に細菌やウイルスなどの病原微生物が肺に感染して炎症を起こす疾患です。呼吸器の防御機能が病原微生物を排除できなかった場合や、病気やストレスなどのために免疫力が落ちている時など、つまり感染力が防御力を上回った場合に、病原微生物が上気道から下気道、そして肺にまで入り込んで感染し、肺炎になってしまうのです。
がん、心臓病に続いて、肺炎は日本人の死亡原因の第3位を占めています。高齢者や慢性の病気を持っている方などは、肺炎にかかりやすく、しかも治りにくい傾向がありますので、要注意です。予防や早めの治療が重要です。予防には「肺炎球菌ワクチン」の接種が有効です。
肺炎の症状
下記のような症状が1週間以上続いたような場合は、肺炎の疑いが出てきます。
ただし高齢者の場合は、肺炎になってはいても、こうした症状が現れず、単に元気が無かったり食欲が無いだけのこともあるので、要注意です。
- 高熱
- 通常は38度以上の高熱が出ますが、高齢者の場合は、熱が出ないこともしばしばです。
- 咳・痰
- 激しい咳が出ます。適切な治療を受けるために、痰の色や粘りけの具合などを医師に伝えましょう。
- 胸が苦しい(呼吸困難)
- 血中成分や細胞内液が染み出て肺胞に水が溜まり、胸が苦しくなることがあります。
- 胸が痛む(胸痛)
- 炎症が肺を包んでいる「胸膜」にまで及ぶと、胸が痛むことがあります。
肺炎の検査
問診や聴診などの診察の他に、画像検査、血液検査、喀痰検査、迅速検査などを行って、肺炎かどうか、原因微生物は何かを診断します。また、原因となっている病原微生物が何かを突き止めるために、痰や尿を調べることがあります。
肺炎の治療
病原微生物を死滅させる抗菌薬によって治療します。
その他、さまざまな症状を鎮めるために、咳を鎮める鎮咳薬(ちんがいやく)、熱を下げる解熱薬、痰を出しやすくする去痰薬、息苦しさや咳をやわらげる気管支拡張薬などが、患者さん個々の症状に応じて処方されます。
結核
結核とは
結核は、結核菌という細菌が体の中に入り、増殖することによって起こる疾患です。
日本においては、約8割は肺結核です。結核菌が肺の内部で増えて、結核に特有な様々な炎症を起こします。続いて肺が破壊されていき、呼吸する力の低下を来たします。
ほかに肺外結核と言って肺以外の臓器が冒されることもあり、腎臓、リンパ節、骨、脳など、体の随所に影響が及ぶことがあります。
結核は、かつては流行し、昭和25年まで日本の死亡原因の第1位でした。適切な治療法が開発されてからは、患者数は一時期を除いて減少しています。
しかし、決して過去の病ではなく、現在でも年間2万人以上の新たな患者が生まれ、年間2,000人以上の命が奪われています。結核は、わが国の重大な感染症なのです。
(厚生労働省:平成24年結核登録者情報調査年報)
結核の症状
初期症状はかぜと似ています。2週間以上にわたって、咳や痰、微熱が続くようなら、早めに医療機関にかかりましょう。
結核の検査
感染の検査
「感染」については、ツベルクリン反応検査、インターフェロンガンマ遊離試験(IGRA)などにより診断できます。
- ツベルクリン反応検査
- ツベルクリンという液を皮内注射して、48時間後に判定します。結核菌感染やBCG接種を受けた人は、反応して皮膚が赤くなります。痰の採れない方、胸部X線写真の撮影ができない方に有効です。ただし、反応が結核感染のためなのか、BCG接種のためかが判断しにくいケースがあります。
- インターフェロンガンマ遊離試験(IGRA)
- 血液検査によって結核の感染を調べることができます。ツベルクリン反応検査は48時間後に皮膚反応を測定するため、再度医療機関を訪れる必要がありますが、IGRAなら血液を採って、試験管内で検査できます。BCGワクチンの影響を受けないので、ツベルクリン反応検査に代わって行われることが多くなっています。
発病の検査
X線を使った画像検査や細菌検査で診断します。
- X線撮影検査
- 肺結核の発病については、胸部X線撮影を行って調べ、疑わしい影が見られる場合はCTスキャンなどによる精密検査を行います。
- 喀痰(かくたん)検査
- 塗抹検査、培養検査、遺伝子検査などがあり、結核菌を排菌しているかどうかを調べます。結核菌は増えるのか遅いので、培養検査には何週間かの日数を要します。
結核の治療
抗結核薬などの薬で治療します。薬物治療で大切なのは、医師から「薬を飲むのを止めてもいい」と言われるまで、処方された通りに飲み続けることです。咳が止まったからといって勝手に薬の飲み方を不規則にしたり、飲むのを止めてしまったりすると、結核菌が「耐性」を持ち、薬の効かない菌(耐性結核菌)ができてしまいます。
耐性結核は、通常の治療よりも多くの種類の薬を、長期間服用しなければならず、また場合によっては、外科的に病巣を切除せざるを得なくなることもあります。
なお、結核菌をたくさん排菌している場合(痰の塗抹検査で陽性の場合)は入院治療になります。発病しても排菌していない場合は、通院治療が行えます。
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